アルプススノー社編集部

移動旅行、ときどき海外

魅惑のウズベキスタン(5)演出都市ヒヴァ

今日はヒヴァまで200キロ移動して、半日観光して、夕刻夜行列車でタシュケントに戻るという超過酷な予定。誰だこんな計画を作った奴は。他ならぬ私である。

カラカルパクスタン国旗(左)

ホテルから15分ほどスーツケースを押してタクシー乗り場(らしき場所)へ。
屯している運ちゃんに、ヒヴァまで行ってくれと話し出発。
この時出発前に6万スム(約750円)で行けると言われ、ちょっと安すぎるのではないか…と怪訝に思ったが、まあとりあえず時間もないので出発。
途中「ダマス」に囲まれながらも、数々の街を通り2時間半ほど走行して到着。

案の定ヒヴァで降りると運転手に60万スムの間違いだろうと言われた。
ただここは予定の遂行が最優先であるので、気前よく60万スムを渡して運転手と握手。

ヒヴァはまあ一言で言えばテーマパークみたいな場所である。
観光スポットは「イチャン・カラ」という城壁に囲まれた場所にある。

◆イチャン・カラ

まずイチャン・カラの入場料15万スムかかり、さらにカラーン・ミナレットに登るための料金が10万スムかかった。特にミナレット登頂料金はガイドブックに記載されていた価格とあまりに乖離しており、この3年間でどんだけ値上がりしたんだとため息をついた。

まあミナレットから風景を見ないとヒヴァに来たといえないのでどこの旅行ガイドにも載っている「イスラーム・ホジャ・メドレセ」に登ってみる。*1

ミナレットから見るヒヴァの風景は箱庭のような風景、としか形容しようのない感じであった。

カラーンミナレットからイチャン・カラ全景

スーツケースは(セキュリティは無いに等しかったが)幸いにも西門寄りにある観光案内所で預かってもらえたので本当に助かった。

半日とはいえ朝から碌に食べていなかったので、クフナアルクの向かいにあるテラッサ・カフェ(Terassa cafe)に入りラグマンなどで昼食を取ることにした。ここはテーマパーク同然なので観光地価格だが、腹が減っては戦が出来ぬぞ。

ラグマン・チャイティー

この後もタシュハウリ宮殿・パウラヴァン・マフムド廟を回った。
旅程上もうこの辺になってくると、私は計画通り観光しようなどという気概も次第に薄れてきて「ヒヴァに行った」と人には言えるからほどほどに回るぐらいでいいやという気持ちになっていた。

異国情緒満載

結局半日ではイチャン・カラを全て見ることは難しかったが、一通りは見られたと自負して後にした。イチャン・カラからヒヴァ駅までは歩いて20分ほどで着く。

直線で道が整備されており、駅からミナレットが良い塩梅に見えるように設計されている。この道を歩くと、私の地元にある某テーマパークを歩いているのと何ら変わらない気持ちになる。

ヒヴァ駅は2018年に開業した大変新しい駅なので、初めから設計されていたのだろう。ほぼイチャン・カラのために作られたような駅だということがよく分かる。

ヒヴァ駅

ただホテルなどの沿道施設は、まだ完全に入居していないようでかなり空きが目立った。

私はヒヴァ駅の窓口で交渉して、ようやくソ連式入場券を手にすることができ感無量だった。これでもう、思い残すことはないですね。

◆ヒヴァ16:22→7:46タシュケント 056ЖА

ヒヴァ駅は中に売店もちゃんとあって、飲み物が買える。しっかりしている。

定刻に列車は発車し、いざタシュケントへ戻る。
この列車で私が取れたのは3等寝台のプラツカルトであった。日本で言うB寝台(死語)の通路側にも、窓と並行する形に2段ベッドがある。

「プラツカルト」(手前右の座席を寝台に組み替えて寝ました)

私の席はこの下段だった。ロシア式の広軌車体ならではの車両のつくりであり、東アジアでは見ることができない。
食堂車を一度体験しようと思ったがスナック程度が売られているのみで、単に雰囲気を味わうだけで自席に戻った。
事前に旅行をされた数々の方の旅行記では、ウズベキスタンの人は気さくな方が多く車内は盛り上がったなど書いている方が多かったが、私が乗った時は周りに落ち着いた方が多く、一部の観光客以外はかなり静かな車内であった。

この列車はヒヴァを16時22分に出発しウルゲンチに16時52分に着くが、ウルゲンチで機関車を入れ替えるために約1時間半も停車するダイヤであった。

隣に停車していたヴォルゴグラードタシュケント行きが先に発車する。
ヴォルゴグラードというロシアの都市が、すぐ手の届くところまで来ている…この高揚感は何物にも代えがたい。

外に出て機関車の入れ替えを見学していたが、ウズベキスタンの車両はロシア規格なので日本の車両の倍ぐらいの大きさがあり、ホームが低いのも相まって近距離で見るとものすごく威圧感があり怖い。

連結作業(ヴォルゴグラードタシュケント方面行き)

ウルゲンチ駅の売店に行き、飲み物を調達し車内に戻る。その後は特にやることもなく寝てしまった。
私は通路側の下段の寝台だったので寝返りを打つと、通路を行き来する客にもろに手足がぶつかり熟睡することはできなかった。ただ車窓を独り占めできたり向かい合わせの客と気まずい思いをすることがないのは、通路側寝台のいいところだ。

この列車は途中ブハラやサマルカンドにも停車するので意外と客の入れ替えがある。特にブハラ(0:17着)で降りる客は時間的に寝ることがないので、横から話し声がやまず、うとうとしていた私としては結構やかましかった。

深夜のブハラ駅

凡そ快適とは言い難かったが、私がウズベク行きを思い立った嚆矢はこの「プラツカルト」に乗るということであったので、きっかけの回収という意味でも思い出になった。

*1:「クフナアルク」の見張り台からでも同じように俯瞰できます(当然金はかかる)