すでに18時を過ぎており、さすがにそろそろザーラム駅に行ったほうが良い。
私はハノイの主要道路がラッシュ時間帯になると渋滞するというのを完全に忘れていた。
バイク交通に最適化されたハノイの道路の渋滞具合は、想像以上にえげつない。
宿にお礼を言って、置かせてもらっていたスーツケースを取り出して、列車の始発駅であるザーラムに向かうバス停へ向かった。
タクシーで行ってもよかったが、調子に乗ってカフェでくつろいだりGrabを使いまくっていたら、残りはバスに2回ぐらい乗れる程度のドン札しか残っていなかったためである。
ロンビエン→ザーラム・バスターミナル
旧市街からザーラム駅に行くには「ザーラム・バスターミナル」に行く路線バスを拾うのが最も安い移動手段と思われる。グーグルマップで調べるといくつか系統がある。
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目を覆うような道路渋滞のなか、03A系統バスに何とか乗り込み移動した。
ザーラムバスターミナルまで旧市街のバス停から約20分。
バスターミナルからザーラム駅まで橋を渡り徒歩5分ほどで着く。

ザーラム駅の周りは地元の売店しかなく、20時を過ぎるとほとんど閉店する。1時間半〜2時間前に着くぐらいがちょうどいい。
ザーラム駅のトイレはそこそこきれい。この列車の再開のために整備したような感じであった。
私は先ほどのブンチャーでまたしても腹を壊したためなおさらちょうどよかった。
ザーラム駅には国際列車専用の待合室が設えてあり、待合室は誰でも入れる。
しかし部屋で寝てる人もいるというのに大音量で電話し続けるベトナム人おばちゃんには参った。
ザーラム駅21:20→10:06南寧 T8702列車
約30分前に改札が始まる。
待合室の前で改札するのはベトナム国鉄職員だが、列車の前にいるのは全員が中国人の乗務員。この列車は中国の客車で運行している。
乗務員は7人ぐらいいた。先頭の機関車を見に行こうと思ったが、完全に職員の壁でふさがれていて行けず。

ガラガラと聞いていたが私の軟臥ボックスは割と埋まっていた(3/4名)。

誰も乗っていない号車もあったので、おそらく詰められているのだろう。
乗客は20人ほど。座席に座ったあともパスポートチェックがあった。
私は今日までベトナムで鉄道に乗ったことがなかったので、何気にこの列車が記念すべきベトナム国鉄初乗車となった。

ザーラム駅を発車し、ベトナム国内は三線軌条でドンダン・憑祥まで向かう。
ザーラム駅までが三線軌条となっていて、中国の客車はロンビエン橋を渡れないためザーラム発着となっているらしい。
三線軌条が100キロ近くも敷設されてるのが凄い。ベトナム国内の区間は、あまり乗り心地は良くない。

貨物は何本か走っているようだが、ハノイ・ドンダン線の旅客列車はこの列車だけなので、逆に狭軌が必要なのか疑問になってくる。

ドンダン駅で出国審査をするため全員下車。ドンダン駅は2時間弱停車する。
ドンダン駅の見どころは、北朝鮮の金正恩最高指導者が2019年に専用列車で来越したことを称えた記念コーナーである。

ベトナムから見た北朝鮮という国は、対米という点で同志みたいなところがあるのだろうか。
ホアロー刑務所でも北朝鮮に対して好意的な展示があったのを思い出した。
ドンダン駅構内は独特の雰囲気があり、あまりふらふらしてると怒られそうなので退散。
乗客が少ないため出国審査は30分程度で全員終わってしまい、残りは無音の時間だった。車内でゴロゴロしていた。

その後30分ぐらい山越え区間の走行をして、中国に入る。
若干レールの軋みの音が消えて乗り心地が良くなる。
中国側の憑祥駅に着いた。
この入国審査が最大のヤマ場。一般的ではない地域から中国に入境すると、尋問になるという話は聞いていた。私自身中国入境は大都市の空港でしか経験がなく、戦々恐々としていた。
入口にいた職員の案内で入国に必要なQRコードの発行をしたあと、こっちへ来てくださいと言われる。*2
そこから20分近く質問攻め。これからどこに行く、中国は何回目か、中国に来た目的は、一人で来たのか、荷物を全て開けてください、スマホのアルバムを見せてください…などなど。荷物も全部チェック。しかもチェックが複数の職員で何回もある。
今思えば私は昨年の哈爾濱から1年足らずで通算5回目の入国であったため、怪しまれないわけない。誤解を与えるようなものは絶対に持っていかないほうが良い。こういう経験を少しずつ積んでいくのが海外旅行の醍醐味なのだろう。
職員が翻訳機を使って丁寧に対応をしてくれたことは幸いだった。
この列車の外国人は私ともう一人のベトナム人だけだったが、同じ個室であった。わざと外国人を相部屋にしてるのかもしれない。

こんなド深夜の田舎駅に上下2本の列車のためだけに、10人近い係員を配置する中国は末恐ろしい。
憑祥駅はドンダン駅以上にホームをフラフラする雰囲気では到底なく、さっさと車両に戻った。

その後空腹も相まってなかなか寝つけないまま南寧到着。
この列車は憑祥で硬座車を増結していたので、南寧に着いたときは長大編成になっており、崇佐などから乗車した大勢の客がホームに降りた。
ただし中国国内では増結車にしか乗れないようにしているようだ。
南寧駅は出口を出ると駅の隅の方に放り出された。

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中国で夜行列車に乗ったのは、2018年の一度きりだった。
そのため今回は本当に久しぶりで、いろいろと勝手を忘れてしまっていた。
入国審査は正直かなり大変だったが、それでも6年越しに「一度は乗りたい」と思っていた列車に乗ることができ、とても満足している。
暗闇の中に佇むドンダン・憑祥駅の光景は、間違いなく今回の旅でも指折りの思い出になった。
なお、2025年12月に崇左南〜憑祥間の高速鉄道が延伸したことで、この夜行列車の存続は怪しいとも言われている。
そういう意味でも、機会があるならぜひ一度体験してみる価値はあると思う。
※旅行記はまだ続きます。