延吉西8:45→9:00図們北9:10→9:35日光山下
最終日。延吉市街地から延吉西駅へ。
全く当てのバスが来なくて結局DiDiでタクシーを呼んで駅へ移動した。
この辺りは日本からの地理的距離はそう遠くないが、心理的な距離感は果てしなく遠く感じるエリアである。
鉄道線の図們北駅は図們の市街地から15分ぐらい離れた郊外にある。
図們北駅から9番バスで南陽亭に向かう。
図們北駅で降りるとほとんどの客が一目散にバス乗り場に向かうので、9番バスの乗り場について心配することはないだろう。
図們市のバスは一律2元。微信で払う。
バスのドアに張り付けられている微信コードを読み取り決済画面を運転手に見せる。アリペイのQRコード機能は使えない。
9番バスは日光山下行きだが終点付近に路駐が多かったからか、手前の自来水バス停付近で降ろされた。

途中貨物列車の踏切で停車したが、昨日の経験からまた検問かと身構えてしまった。

歩いて5分ぐらいで、図們鉄路国門という観光地に着く。
北朝鮮と中国を繋ぐ現役の鉄橋。中国人が嬉々として写真を撮っている。


さらにその先に5分ぐらい行くと「南陽亭」という展望台を兼ねた土産店がある。

南陽亭の建物から繋がる階段を延々と15分ぐらい上がると、北朝鮮をのぞむ展望台に出る。
昨年末韓国側から見たが、その比にならないほど北朝鮮の国土が目の前である。

北朝鮮側にはピンク色っぽいマンションのような建物が整然と建っているが、どう見ても人が住んでるように見えない。明らかハリボテじゃないか。
これらのマンション風の建築物は、北朝鮮のメンツを保つために建てられているとの噂である。
その後ろには、金日成と金正日の肖像画が掲げられた駅らしき建物がある。
南陽駅という現役の駅らしい。列車が見られたらかなりラッキーというぐらい列車の本数は日によってまちまちのようである。
図們は、外国にいながら唯一この肖像が肉眼視できるスポットとのこと。
私は図們に来てこれが見たかっただけ。

ハリボテの隣や駅の後ろにある家には人影があったが、人家のなんとも粗末なこと。
およそ2025年の家とは思えない。広場で遊んでいる子どもたちの姿を見ていて哀れな気持ちになる。
図們は近年目立つ行動をした外国人が職質されたり、きな臭い事が起きていると聞いていた。*1
図們・琿春のホテルに宿泊すると公安(警察)が張り込んで職質されるということもあるみたいだ。
実際通りゆく公安の人数は多いので、皆こちらを見ているように感じてしまう。
とにかく余計なトラブルを避けるため、外国人とバレないように、多くの中国人に紛れて現地人らしく自然に振る舞うことに徹していた。
しかしこの南陽亭は中国人に人気の観光地らしく、百度地図のオススメスポットにも出てきた。
目の前の大勢の観光客は完全な観光ムードで、北朝鮮を眼前に記念碑の前で写真を撮りまくっており、緊張感など微塵もない。
中露朝に囲まれた完全アウェーの地に来ていながら、この矛盾した感覚は何なんだ。

南陽亭は一階がロシアの土産で二階が北朝鮮の土産売り場となっている。
特に二階の品ぞろえが北朝鮮の模擬紙幣やピンバッジなど、絶対に日本で売られることはないような商品のオンパレードである。
持ち帰ると各方面から怒られそうなので眺めるにとどめた。*2

北朝鮮の山の先にある光景は知る由もないが、とにかく北朝鮮を肉眼で見られてよかった。
国境地帯としては安全とされる丹東市をすっ飛ばしてこちらに来たのはどうなんだろうと思ったりして、昨日と同じく追い返される結果になるような気がしていたが、懲りずに来てよかった。
この南陽亭から北方面に歩いて行くと「図們口岸」という北朝鮮の国境部まで歩いて途中まで行けるスポットがあるらしいが、改修工事をしていて2025/7時点では近づくことができなかった。
図們駅の近くには阿里郎飯店という有名な北朝鮮レストランがあるとのことだが、南陽亭からは少々遠い。
雨が降っていることもあって、鉄路国門の近くにある「小金姑娘」という店で大同江ビールとビビンバを食べた。55元。

大同江ビールとは北朝鮮の平壌工場で作っているといわれるビールである。
初めて飲めて感動。非常に飲みやすく好印象。
観光地のはずなのにそこまで値が張っていなかった(25元)。
腹を満たして9番バスで図們北駅へ戻った。図們北駅の周りは何もないので絶対に市街地で飯を食ったほうがいいです。
図們北13:26→15:58龍嘉(長春空港)
この旅行は事実上ここで終了。後は帰るだけ。
帰りの長春行き列車は一駅ごとに隣の客が入れ替わる混雑ぶりだった。*3。

長春空港には16時30分頃に着いた。
ここから19時発のフライトで乗り継ぎ成田に帰る予定だったが、中国南部の台風の影響で飛行機が遅延しているとのこと。
結局6時間も遅延し、長春空港を出発したのは深夜1時。長春空港に実質8時間近く幽閉されるハメになった。
長春空港は土産を買おうと一通り散策したが、あまり買いたいと思うモノはなかった。

この旅行は最初から最後までほぼ移動・活動しっぱなしで我ながら稀に見る体力勝負の旅行であった。
まあもともと旅程詰め込みすぎなのに加えて、延吉西駅が予想以上に市街地から遠かったのが個人的には痛かった。
楽天モバイルのローミングだけでは全然通信量が足りなくてこんなに足りなくなるものかという感じだった。通信できなければ何もできない(特に鉄路12306アプリ)ので次回から改善していきたい。
まさか昨年行ったカンボジア・タイ国境が緊張状態になるなんて思いもしなかったし、中国だっていつまでノービザが維持されるかもわからない。
まあ中国に関しては、現情勢で突然ノービザがぶった切られることはないと個人的には思っているが…。
海外旅行は行けるタイミングで行っておかないといけない。

振り返れば図們に行けたということだけでもいい経験になった。
そうは思いつつ、今回ほど住めば都というか千葉に帰ってきて安堵した旅もなかった。(終)