2020年**月**日(--)
相変わらずガラガラの安房鴨川行きに乗り一路鵜原駅を目指す。
もうこの時間になるとクロスシートの車両にしか客が乗っていないレベル。
駅や車内で盛んにテレワークをしろと言っているが、裁量権のない労働者側にいくら喚起してもしょうがないだろう。テレワークのできない身だから電車に乗ってるんだよと不快になる。
鵜原理想郷は、手弱女平(てよわめだいら)と白鳳岬、毛取岬の三つの景勝地がある。
景勝地というほどのものではないのかもしれないが、全体的に閑散としていた。
千葉らしからぬ、透明な透き通った海の色だ。手弱女平最奥は行き止まりになっているだけで柵すらない。崖から落ちたらいっかんの終わりだ。
遠目には勝浦海中公園の展望塔が見える。こちらは臨時休業中であった。手弱女平の風景は残念ながら独り占めすることができなかったが、十分に素晴らしい景色だ。
散策道のところどころに立っている案内表示の石碑には、側面に与謝野晶子が詠んだであろう句が書かれているのだが色合いのせいでかなり読みづらい。読めない。
最後の白鳳岬はとても風光明媚なところ。黄昏の丘というところに出る。突然現れたお花畑のようなところで、私はここが一番気に入った。ここに立つと今まで巡ってきた二つの観光地を見渡すことができるが、写真ではあまり映えなかった。黄昏の丘の先にも大杉神社という寺社があることにあとから気づく。
鵜原理想郷は鵜原駅前を起点に周回することができる。これは知らなかった。総評としては、私有地を切り開いた丘のような印象を持った。
8両編成。行きも空いていたが帰りも驚くほど人が乗っていない。この環境で3密なわけがない。
来年には外房線の系統分離が図られると噂されているから、房総南部に8両が一日中乗り込んでいる風景も今年で終わりだろう。
それにしても、昨今の論調は私にとっては趣味をせずに生活しろと言われているようなもので生きる意味がない。
テレビを見ていると毎週毎週何か敵を作らないといけないような風潮。
4月下旬はスーパーに密集する人たちや、江ノ島への道路が渋滞する様が槍玉に挙げられていた。
岡山県では岡山に来たことを後悔するようになればいいという発言、徳島県は県外ナンバーのチェック、沖縄にGWに6万人行くというガセ情報が蔓延ればJAL,ANAの修行僧が叩かれるなど、観光に意気盛んだった昨年とはほとんど真逆のようなことをテレビで繰り返し放送していた。
少し前に観光立国などと言っていた頃が遠い昔のように感じられる。このコロナ騒動が終わった頃に、とんでもない熱い手のひら返しが起こるような予感がするが、それはまだ今時点では相当先で予測できない。仮に終息しても以前の旅行需要はしばらく戻らないのではないかと思う。
こんなに自粛警察がネット上に蔓延っていては、旅行したなんて一言こぼすだけで格好の糾弾材料を与えているようなもので、記事一つでもまあ筆が進まないこと。
飛行機に乗ったという報告をSNSに上げただけで本人宛にDMを送る人間がいる、という体験談を聞くと虫唾が走る。
かの戦時中もご近所の自警団や隣組という組織が戦争の継続に一役買っていたといわれるし、構造的には70年以上たっても何も変わっていない。
海外旅行が解禁されるときが来てほしいが、あいつはどこへ行ったなどと病原菌扱いする人間が必ず現れるだろう。
所詮旅行に頻繁に行く人間などマイノリティーに過ぎないということか。
旅先に行っても歓迎されず、旅行に行ったといえば浮かない顔をされる。それが場合によっては2,3年近くも続くのかと思うと、なかなか悩ましい。