能登半島を走る路線バスは、複雑怪奇な系統が多いことで有名です。
昨年、この地域を走る「北鉄奥能登バス」が乗り放題になる「奥能登まるごとフリーきっぷ」がついに発売され、それだけ複雑なら乗りこなしてみたいと俄然興味がわいたので、綿密な計画を作成して実現に至りました。
◉東京駅22:30→6:00金沢駅 きまっし号(東北急行バス)
初めて3列シート車の窓側に座れたので、とても気分が昂揚した。三芳SAで休憩があったことにも気付かず、泥のように眠ってしまった。
厳密にいえばこのバスは佐奇森車庫行だが、乗客全員が金沢駅で下車した。
◉金沢6:07→6:46芦原温泉7:05→7:19森田 北陸本線特急「サンダーバード4号」・普通
この旅の目的の一つに「青春18きっぷの常備券を自力で買いに行く」というのがあった。
今まで親戚に買ってもらってばかりだったので、自分の手で常備券を手に入れたいと、かねがね考えていた。
最近「笑っていいとも」を見直すことにハマっていたので、今季の18きっぷは森田駅で買おうと決めていた。
(追記:後日よく考えたら、香川に一度買いに行ったことがあったので、初めて自力で買ったというのは間違いでした)
窓口のおばさんに「どこから来たんですか?」と聞かれた。
森田駅の窓口は7時から営業なのに、私が買う前に5枚売れたらしい。上には上がいるんだなぁ…
◉森田7:43→7:48福井8:05→8:24武生 北陸本線普通
福井鉄道の200系という車両が面白いというので遥々ここまで来たが、10日前から点検に入ったとホームページに載っていて、結局目にすることはできなかった。
ただでさえ福井鉄道は車両の運用が読みづらいこともあり、遠方から狙うのは酷なところがある。
武生にて4分乗り換えで急行に乗れば、田原町まで全線乗車できるとわかったので、越前武生駅までダッシュして乗ろうと画策したが、武生駅に着く寸前、眼下に880形が見え、走る気力を失くした。
この列車も880形だった。路面電車なのか鉄道なのか形容しがたい、面白い路線である。
この日は大型車がほとんど運用に入っていないようだった。
市役所前からバックして福井駅前に入る。あまりこういう運行体系は見かけない。通称ヒゲ線と言われるらしい。
えちぜん鉄道は昨年から、北陸新幹線のために建設された高架を間借りして運行している。
最初は混んでいたが、どんどん人が減っていき、三国港駅まで乗っていたのは地域の習い事に通っている人たち4人と、私だけだった。
まさかの無人バス・・・
東尋坊周辺は、思ったより俗化されていて、よく見る観光客目当ての土産屋や飲食店が並んでいた。
自殺の名所とはいうものの、四国の足摺岬に比べると、介助してくれる人(=土産屋の人)が近くにいるし、そうでもないんじゃないの、という印象に落ち着いてしまった。
◉東尋坊11:54→12:39芦原温泉駅12:42→13:17金沢 京福バス・北陸本線特急「サンダーバード15号」
乗客7人。途中の「井江葭」「十日」という地名が印象的。
券売機が地元の高校生で非常に混んでいて、こりゃ間に合わんと腹を切ったが、幸運にも特急が5分ほど遅れて、事なきを得た。
これに乗れたことで七尾線が一本早い電車に乗れる。
サンダーバードは、新幹線なんて造らなくてもこれで充分だろと思わせるほど、快適な車内空間であった。しかし適用されるのがA特急料金なので、B特急料金の渦中にしか身を置いたことがない者としては、かなり高い。
東尋坊が愛知や関西の観光客で占められていたことを思うと、新幹線を敦賀まで暫定開業してしまうのは、地域の分断を招きかねないと感じる。
長野から着工し始めたころに、関西側から建設を始めればよかったんじゃないかと思うが、ルートであれだけ揉めては、そうもいかなかったのだろう。
◉金沢13:29→14:57七尾 七尾線普通
昨年、北陸新幹線が開業し、あらゆるものが一新された輝ける金沢駅にあって、唯一開業前に戻ってしまったかのような七尾線の普通列車。
車内はボックスに2人程度。
津幡~中津幡間で、全国的にもかなり珍しくなったデッドセクションを体験。
宇野気(かほく市)以降は乗客が降りる一方で、羽咋を過ぎるとほとんど人がいなくなった。
朝のサンダーバードでパンを食べてから何も口にしていなかったので、ここでは食べ物にありつきたい。駅前の寿司屋で軽めの昼食とした。
◉七尾16:23→17:06穴水 のと鉄道普通
発車20分前で、ボックスに2人程度の乗車。田鶴浜までは立ち客も多数いた。
向かいに座っていたおばあちゃんに旅行客だとあっさりバレて、観光案内をされる。「能登中島駅の郵便車は全国に2両しかないから、写真とったほうがいい」という。以前、ホームの隅に置いてあるのを雑誌で見たことがあったが、駅舎横に移動したのは知らなかった。イベントの時だけ、車内を開放するらしい。
のと里山里海号に乗ると、能登中島駅での散策時間まで設けてあるというが、そもそもあれは観光スポットなのか…?
おばあちゃんは、なぜか城端市街地のパンフレットを持っていた。
★穴水駅17:10→17:44輪島駅前 北鉄奥能登バス 輪島駅前行き
乗客4人。かつて穴水~輪島間には駅が2つしかなかったのが信じられないほど、バス停の数が多い。
旧輪島駅は「ふらっと訪夢」という道の駅になっている。
一角に、輪島駅のホームが保存されている。穴水~輪島間は、2001年3月31日に廃止された。
今日は宿を素泊まりにしていたので、夕飯をどこかで取らなければならなかったのだが、何と道の駅内に、あまりに場違い感漂う「ゴーゴーカレー」が店を構えていた。救われた思いがした。
宿泊したペンションもきれいで、ゆったりと過ごせて良かった。人生、笑うことは大事だなぁと感じた。